この度、株式会社コナカが展開するオーダースーツブランド「DIFFERENCE」から日本初となる国産梳毛ウール100%の高級スーツが誕生しました。そのウールに用いられているのはなんと、国産羊肉ブランド・メルティーシープの羊毛です。
Life with YOU(羊)編集部とも関わりの深いメルティーシープの羊毛がどのようにして国産梳毛ウールのスーツになったのでしょうか?順を追ってみていきましょう。
国内に流通する羊毛の99%以上は海外からの輸入品
現在のところ、日本で流通しているウールはほとんど海外からの輸入品です。
羊毛の自給率に関する直接的なデータはないのですが、羊毛の年間輸入量は8,150,058kgで※1、国内で飼養されている羊は約20,000頭でその多くは食肉用のサフォーク種であることを加味すると※2、その全ての羊毛が利用されたとしても60,000kg程度で、羊毛の自給率は1%未満だと推定されます。
つまり国内に流通する99%以上の羊毛は海外からの輸入品となっています。実際のところは食肉用の羊の毛は捨てられることが多いため、自給率はさらに低いと考えられます。
国産ウールの生産に立ちはだかる高いハードル
こうした状況に加えて、国産ウールを生産することには製造・流通それぞれで高いハードルがあります。まず、育てられている羊の多くが食肉用のため、ウールに活用できるような管理がされ、十分な長さをもった羊毛がそもそも少ないということがあります。
また、国内で羊毛のゴミ取りや洗毛といったところから行えるような専門施設がないなど、国産ウールを製造・流通させられる環境が整っていないのが現状となっています。
早くから取り組んできたメルティーシープの羊毛活用
そのような中、メルティーシープを育てる吉田さんの畜舎では、刈り取った羊毛を保管してウィルタス研究所と共同で早くからウール開発に取り組んできました。本来、羊は「捨てるところがない」とも言われるサステナビリティに優れた資源でもあるので、もし国産の羊毛をうまく活用できればSDGsの取り組みにもなるはずです。
羊毛としての活用を模索していく中で、もともと羊肉用として育てられてきたメルティーシープが羊毛でもユニークな特徴があることがわかりました。羊毛の繊維が長いということ、また毛質もいたみがなく優れていること、毛のニオイも少ないといったことです。これらは様々な要因が考えられますが、アミノ酸やビタミン類が豊富な食事や獣医師による日々の健康管理などが、羊肉だけでなく羊毛にも良い影響を与えたのかもしれません。
こうした優れた特徴を生かすべく、メルティーシープの羊毛からのウール開発が本格的に始まったのです。
通算3年、延べ50人以上の手作業で取り組んだ羊毛管理作業
既存の製造・流通ラインがない環境でのウール開発は当初様々な困難に遭遇しました。ウィルタス研究所では羊毛の専門チームを立ち上げ、個体識別や羊毛管理作業に取り組んだものの、かなりの労力を要し、通算3年間・延べ50人以上が従事しました。
また、洗毛工程についても大きな課題でした。海外では希硫酸を用いて羊毛を洗浄するのが一般的ですが、有害物質も出るため国内では禁止されており使えません。そのため、代替となる方法を様々に模索していましたが、実はメルティーシープの羊毛の脂の質であればお湯などでの洗浄ができると判明しました。
株式会社コナカのもとで、さまざまな技術者の力を結集して完成した日本初の純国産梳毛ウールのスーツ
ウール開発への様々な課題を一つ一つクリアしていく中で、株式会社コナカよりメルティーシープのウールの品質を認められ、製品化に向けた開発が進められました。同社のもとで各方面の技術者が結集し、ついにメルティーシープの羊毛から日本初の純国産梳毛ウールのスーツが完成したのです。
ウールというとふわふわとした肌触りの紡毛ウールを思い浮かべますが、スーツ生地に用いられる梳毛ウールでは繊維の流れをコーミングによって一定・均一に整えます。メルティーシープの羊毛を使った梳毛ウールはとくに光沢に優れハリのある生地になっており、しわになりにくくさわやかな着心地のスーツに仕上がっています。
純国産梳毛ウールスーツ・詳細情報
- 2023年6月30日よりDIFFERENCE全店舗で発売開始
- 限定12着
- ネイビーヘリンボン
- オーダー価格 275,000円(税込)
株式会社コナカでのプレスリリース情報:JAPAN FUKUSHIMA WOOL オーダースーツ発売開始
※1 「農林水産物輸出入統計」2022年より。
※2 国内の羊の飼養状況は農林水産省「めん羊・山羊をめぐる情勢」令和4年より。サフォーク種1頭当たりの羊毛は畜産技術協会「羊毛の多面的利用・国産羊毛の生産と流通及び国産ラム肉と ニュージーランド産ラム肉の官能特性に関する調査」平成10年より。